雨の中に落してきたハンカチ取りに戻る


さつきから夕立の端にゐるらしき  飯島晴子


 車で走っていると雨から抜け出て「端」を感じることがありますが、いつもは端の存在を忘れて「降って来た」「止んだ」と言っています。雨に対して自動的であるか多動的であるかの違いでしょうか・・・。いずれにしてもグラデーションの雲では端は分かり辛いですね。だから夏の夕立が、午後の陽射しとくっきりと隔てられ「端」を強く意識するのかもしれません。
私も一度、とてもビジュアルな印象として残っている「端」があります。やはり暑い夏の午後、繁華街の屋外パーキングに向かっていた時に夕立にあって、走って近くの軒下に逃げ込みました。ハンカチで叩くように拭いていて、ふと顔を上げると、3m程先はアスファルトが乾いて、そこはそれまでの明るい陽が照って、くっきりと塗り分けたように
濃淡に境目が出来ていました。軒が連なったところに居たのなら、きっと気付かないことだと思います。私は慌ててハンカチを落としてしまいました。
 郊外に住んでいる人には珍しいことではないのかもしれませんが、私にはとても珍しく思えました。






 3月11日の夕立。今私は雨に濡れていませんが、きっと夕立の端にいるんでしょうね。海外から見れば、私も雨の中に居るように見えると思います。夕立の端で濡れているのかどうかは自分の感覚でしかわからないと思います。


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