酷暑を溶かす炎
Flame to melt the "intense heat"
「酷暑を溶かす炎を求めて居る女だ」 放哉凮
今年の1月に山名 兌二さんという数々のCMを作って来られた監督さんが癌で他界されました。ディレクターの名前は知らなくても、ある年代以上は、『おかあさ~ん』というハナマルキのCMは覚えている人も多いのではないかと思います。
その山名さんとは、Facebookを通して実質半年間のお付き合いでした。申し訳ないですが、そんなCMディレクターとは存じ上げず、最初は知らない人から来たフレンド申請の一人に過ぎませんでした。 しかし、すぐにそのウォールの特異さ面白さに気付き、POSTに夢中になりました。それは、尾崎放哉を紹介しながら、ご本人が作られた自由律の俳句コラージュを訪問者があれこれと自由に感想を書いていくもので、私にとってはまるでマスカレードのような謎解きの楽しさがある俳句とイメージ(イラストや写真)が2-3日置きくらいに次々に載って行くものでした。
当時のPOSTの画像 |
そんな2011年の初夏のある日、私は電力不足が予想される盛夏に何か目に涼しいものを作れないかと考えていました。これまでガスコンロやバーナーで造形していたPET(ポリエチレンテレフタレート)を、もっと身近で簡易な―誰でもどこでも入手できる熱源で作れないものかと自分のウォールでフレンドにアイディアを求めていました。
ある方はトーチを、またある方は蝋燭を提案して下さり、それをまたフレンドが実験して自分のウォールにUPして見せて下さり・・・そんなやり取りをしている時、私のPOSTに山名さんがコメントとして書いて下さったのが「酷暑を溶かす炎を求めて居る女だ 放哉凮^^」(そのまま転載)でした。
昨日あるテレビ局から、ペットボトルのエコアートを紹介して戴けないかという電話があり、「エコではないので」とお断りしたので、このことを書いています。ちょうど先日、1年前のことを山名さんの娘さんとこの句を観て思い出していたところでした。
もともとから、PETを使ったクラフトはエコではありません。2000年前後に食品容器包材のリサイクル表記が変わることで、主に子ども達のために、プラスチックの分別に興味を持たせ、楽しみながら知識を得て貰おうと考えた科学工作がもとで誕生したアイディアでした。
ものを再生させることは、必ずしもエコとは限りません。場合によっては新規に作った方がコストもCO2も少なくて済む場合も少なくないのです。
ではなぜ? テレビや本など目で見ただけのものとは違って、ものづくりを通して体感した知識は、ただ右から左へシェアさせるものではなく、なんらかの実感を通して伝わるものだと考えているからです。
また、工業製品ではないアート(ものづくり)は、わざわざエコという言葉を被せて括る必要はないもので、人の精神活動のためにあって、それによって自分自身が楽しんだり、他人を和ませたり・・・するものだと思います。
青い焔が視覚的にも涼しかったからか・・・「酷暑を溶かす炎」という矛盾は日常には無いことですが、限られた秒数の中で観る人の中に強い印象を残すCMを作って来られた人らしい感性だと、今更ながら思いました。
山名さんも、きっと私(の制作活動)を理解して下さり、そんなお気持ちでこの句を下さったのだと感じています。
山名さんや、日本だけでなく海外の友人の協力を得て完成したPETアート「氷柱」。
涼しさと作る楽しさを世界中にシェア出来たのも多くの人からの賜物です。
How to Make an Imitation Ice Vase from a Plastic Bottle |